ちょっと道草食っていけ。

雑多な日々のあれこれを書いてます。

酒は二十歳にならずとも。

寒空を尻目に熱々の鍋を食べども、腹が減るのは何故だろう。

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それは昆布から出汁を取り、豆腐、鶏、葱、白菜、豚、茸等を一緒に炊いたもの。
秋から冬の定番である。
(寒い日などはとても恋しくなり、恋しさのあまりコンビニのおでんに浮気することも多々ある。
タツで足をでんっと伸ばし、鍋をつつく。
鍋を囲む者が多ければそれもまたよかろう。)

『それは言わば、会話と他ならない。』

と、買い物袋を下げた私に口を挟む者がいた。
(どうやら妄想が口から漏れ出たらしい。恥ずかしい。)
『はぁ。』と、生返事を返す。
黄昏時で助かった。赤面は分かるまい。
『兄ちゃん、今日は鍋かい?』とおっさん。
『そうです。独りだけど。』
『だったら俺も混ぜてくれよ。』とおっさんがニカッと笑う。
『嫌ですよ!なんでそうなるんです。』と変質者への対応にチェンジしつつ応対した。
『そうかい、ならそれでもいいや。これ、呑め。もう呑めんだろ。』とまたニカッと笑いならが、酒を投げてきた。
突然のことに驚き戸惑いつつも、何とかキャッチしておっさんを見る。
『…』
そこにはもう居なかった。ラベルには【繁桝】と書いてあった。

家に着き、鍋を拵え、コタツに入り『いただきます。』
タツの上にはさっきの酒がコップに注いで置いてある。

今日は冬の連休の中日。じいちゃんが死んだ日。

鍋を食べる前に、コップの酒をぐいっと呑み干す。
今日で俺も二十歳になった。
じいちゃんが好きだった酒はこれだったかも知れない。

おわり。