ちょっと道草食っていけ。

雑多な日々のあれこれを書いてます。

私の今は Ⅰ

 朝、蛇口を捻って水を出す。白い陶器の流しに水が流れ込み、ザーッと音を立てる。今、この家にあるのはこの音だけ。両の手で水をすくい鼻先まで持っていく。「冷たっ。」顔を洗うのを避け、銀製のコップを手に取り流れる水柱にそっと傾け入れる。コップに水が流れ込むのをシツはじっと見つめた。水は滔々とコップから溢れ出している。

 「漆(シツ)?」と彼を呼ぶ声がした。シツが顔を上げると鏡に映るアイが居た。「きたの?」と聞かれ「いや、何も。」と鏡越しに彼女を見ながら返す。「そか。さぁ朝食だよ。顔洗った?」と聞かれ「洗った洗った。」と返し朝食の席に向かった。